~安全で快適に働くための工夫~
はじめに
交通警備員は、道路工事や建設現場、イベント会場などで車両や歩行者を安全に誘導する重要な役割を担っています。
しかしその業務は、屋外での長時間勤務が中心となるため、季節ごとの気候に大きく影響されるという特徴があります。
特に夏場の猛暑や冬場の厳しい寒さは、警備員の体力だけでなく集中力にも大きな負担を与え、熱中症や低体温症といった健康被害を引き起こす危険性があります。
また、体調不良によって誘導が乱れれば、交通事故や現場全体のトラブルにもつながりかねません。
本記事では、交通警備員が安全かつ快適に働くための暑さ対策と寒さ対策について、それぞれ詳しく解説します。
1. 夏場の暑さ対策
1-1. 夏の交通警備が過酷な理由
夏の交通警備は、炎天下の道路で長時間立ち続けるため、非常に過酷です。
以下のような要因が重なることで、熱中症や脱水症状のリスクが高まります。
- アスファルトの照り返しによる体感温度の上昇
→ 気温35℃でも、地面付近は40℃以上になることも。
- 制服や安全装備による熱のこもり
→ ヘルメット、反射ベスト、長袖制服などで放熱しにくい。
- 風通しの悪い場所での勤務
→ ビル街や車通りの多い道路では風が抜けにくい。
- 水分補給が遅れやすい業務環境
→ 持ち場を離れられず、こまめに水分を摂ることが難しい。
特に工事現場では重機や車両が常に動いており、警備員は一瞬の判断ミスが許されません。
暑さで集中力が低下すると、重大な事故につながる危険が高まります。
1-2. 熱中症のサインを知る
夏場の交通警備では、熱中症対策が最も重要です。
まずは自分や仲間の体調異変に早く気づくために、症状を理解しておきましょう。
| 症状レベル |
主な症状 |
対応 |
| 軽度 |
めまい、立ちくらみ、大量の汗、手足のしびれ |
日陰で休憩、水分・塩分補給 |
| 中等度 |
頭痛、吐き気、体のだるさ、集中力低下 |
冷却タオルで体を冷やす、スポーツドリンク摂取、現場責任者へ報告 |
| 重度 |
意識がもうろう、呼びかけに反応が鈍い、発熱 |
すぐに救急要請、日陰に移動し応急処置 |
ポイント
「あれ?少しおかしい」と思った時点で無理をせず、早めに休憩を取ることが重要です。
1-3. 暑さ対策の基本
① 服装と装備の工夫
- 通気性の高いインナーを着用する
→ 吸汗速乾素材のインナーで汗を素早く蒸発させ、体温上昇を防ぐ。
- 空調服(ファン付きベスト)を活用
→ 現場によっては会社支給のケースもあり、炎天下では効果絶大。
- ヘルメット用冷却シートや冷感タオルを活用
→ 頭部を直接冷やすことで熱中症予防になる。
- 濃い色の服装は避ける
→ 黒色は熱を吸収しやすいため、なるべく薄い色の作業服を選ぶ。
② こまめな水分・塩分補給
- 喉が渇く前に少量ずつ飲むことが大切。
- 水分だけでなく、スポーツドリンクや塩分タブレットでナトリウムを補給する。
- カフェインやアルコールは利尿作用があるため勤務前後は控える。
③ 日陰での休憩を徹底
- 30~60分ごとに5~10分程度の休憩を取り、体温を下げる。
- 休憩場所には扇風機や冷風機を設置できると理想的。
④ 勤務前後の体調チェック
- 朝の点呼時に体温や体調を確認し、異変があれば無理をせず休む。
- 前日の飲酒や睡眠不足も熱中症リスクを高めるため注意。
1-4. 現場単位でできる暑さ対策
個人の努力だけでは限界があるため、現場全体での取り組みも重要です。
- 現場責任者による定期的な巡回
→ 警備員や作業員の体調をチェックし、異変があれば交代を指示。
- 休憩シフトを調整
→ 警備員が持ち場を離れやすいように人員配置を工夫する。
- 熱中症対策グッズの支給
→ 経口補水液、冷却スプレー、日除けテントなどを会社側が準備。
1-5. 夏場の警備で意識すべき心構え
暑さは見えない敵です。
「自分は大丈夫だろう」という油断が最も危険です。
体調が少しでもおかしいと感じたら、自己申告をためらわずに行うことが、事故防止につながります。
2. 冬場の寒さ対策
2-1. 冬の交通警備が過酷な理由
冬場は寒さに加え、雪や雨、風などが体温を奪います。
特に長時間立ちっぱなしで動きが少ない交通警備では、体が冷えやすく、次のようなリスクがあります。
- 手足の感覚が鈍る
→ 誘導棒や無線機の操作が遅れ、交通誘導に支障が出る。
- 集中力低下による事故
→ 寒さで判断が遅れ、車両接触事故を招く可能性がある。
- 低体温症の危険
→ 体温が35℃以下になると震え、意識混濁などが起きる。
2-2. 寒さ対策の基本
① 防寒装備を徹底
- インナーウェア
→ 吸湿発熱素材(ヒートテックなど)で保温性を高める。
- 重ね着の工夫
→ インナー・中間着・アウターの3層構造で体温調節しやすくする。
- 手袋・靴下の保温強化
→ 指先やつま先が冷えると作業効率が低下するため、厚手のものを使用。
- 防寒ブーツを活用
→ 滑り止め付きで安全性を確保。
- ネックウォーマー・耳あて
→ 首や耳は熱が逃げやすく、保温効果が高い。
② 体をこまめに動かす
- 同じ姿勢で立ち続けると血流が悪くなり、冷えやすくなる。
- 休憩時や信号待ちの合間に足踏みや軽いストレッチを行う。
③ 温かい飲み物で体を温める
- 休憩時には温かいお茶やスープを飲み、体の内側から温める。
- カフェインを含まない飲み物がおすすめ。
2-3. 雪や雨の日の注意点
- 滑りやすい路面に注意
→ 靴底は滑り止め付きのものを使用し、歩幅を小さくして歩く。
- 視界確保の工夫
→ 雪や雨で誘導灯が見えにくくなるため、LEDタイプや明るいカラーを使用。
- 防水対策
→ 防水性の高いアウターやレインコートを準備し、体を濡らさない。
2-4. 現場単位での寒さ対策
- ストーブや暖房器具の設置
→ 休憩所には石油ストーブや電気ヒーターを設置して体を温める。
- 温かい飲料や使い捨てカイロの支給
→ 会社や元請けがサポートすることで士気も向上。
- 交代制での休憩
→ 長時間の寒さ exposureを避けるため、30分~1時間ごとに交代。
3. 季節を通して共通する体調管理のポイント
- 十分な睡眠を確保する
→ 睡眠不足は熱中症や低体温症のリスクを高める。
- 栄養バランスの良い食事
→ 特に夏は水分補給、冬は体を温める食事を意識。
- 日々の健康チェック
→ 体調がすぐれない日は無理をせず、責任者に報告。
まとめ
交通警備員は、季節を問わず屋外で安全を守る重要な仕事です。
しかし、夏の猛暑や冬の厳寒は体に大きな負担をかけ、集中力や判断力を奪います。
- 夏は熱中症対策を徹底し、こまめな水分補給と休憩を心がける。
- 冬は防寒対策を強化し、冷えによる判断ミスや事故を防ぐ。
- 現場全体で協力し、体調管理と安全意識を高めることが重要。
警備員自身の健康を守ることが、結果として現場全体の安全確保につながります。
日々の業務で暑さ・寒さ対策を徹底し、安全で快適な交通警備を目指しましょう。
